穏やかな日和に恵まれた新年、この日も見事な三日晴。JR逗子駅前で御慶を交わす24名、中にはすでに海岸を散策してきたグループもある。住宅街を抜けると坂東第二番札所、岩殿寺の山門。逗子に住んだ泉鏡花がこの観音堂をモチーフに作品を残している。急磴を登り切ると巌をくり抜いた観世音堂が、鏡花寄進の池には椿が影を落としていた。

 次に日蓮上人が焼き討ちに会った時、白猿に導かれ難を逃れたとされる法性寺。ここも急磴につぐ急磴。寺の裏の墓地を抜けると、城壁のような大切岸が目に飛び込む。長さ800メートルにわたり、高さ10メートルの断崖が続く。近年の研究で鎌倉石の採石場の跡と判明した。この先の曼陀羅堂跡には、切岸に3段、4段の矢倉が掘られ、中に無数の五輪塔が収められているのが遠望できる。公開は2月中旬とのこと。

 鎌倉七口の一つ名越切通しは、狭いところは1メートル弱、昔はこの径が三浦から鎌倉に抜ける唯一の浦賀古道だった。歯朶覆われた巨岩の間を一人ずつ抜けて行く。

 棚山主宰は今回参加されなかったが、柚口満さんが正月三日の吟行句会の意義を説き、「この一年のご健吟を」と励ます。幹事の山﨑赤秋さんに感謝と来年を期待する声があがる。句会・懇親会は鎌倉駅前「茶寮いの上」で行い、定番の「越後にて候」とシラス膳で和楽の時間を過ごした。(報告 竹内岳)

当日句より
早梅や枝の先まで苔を被て通子
正月の供花や名もなき墓の辺に 
海見んと登りゆく我が恵方道階子
初鴉すは鎌倉の切通し子貢
冬芽出づ宗祖受難の地を訪へば眞理子
扁額を掲ぐる白猿淑気満つ 
寒椿浮かべ鏡花の池閑か妙子
切通し抜けて初東風ふくらめり清人
行き止まる谷にほつほつ梅の花千代
恵方道膝笑ふまで登り下り美保
寒禽のこゑに鎮もる鏡花池 
やぶ椿寺の縁起に影をひく千枝子
紅淡く鏡花の池の冬椿まゆみ
名越抜け古戦の海のいかのぼり 
鏡花池かはせみの翔つ三日かな和世
粲粲と大切岸の四温光研治
日溜りに名残りの菊や岩殿寺八起
笹子鳴く名越切岸木の根径まさこ
利休梅はや一輪の白ほぐす純 
笹鳴や一人身幅の切通し朝実
往還の庚申塔や初御空 
身を斜に名越抜けたる淑気かな富彦
冬かはせみ鏡花の池に色散らす美代子
水仙の磴ふり向けば逗子の海赤秋