初燕見しより街の明るさよ
のどけしや湾に光の波たたへ
寒明けのゐすわる風の荒々し
遠く住む親を思へば亀鳴けり
夏草を踏めば故郷の匂ひかな
潮早き島の岬や大海月
ふるさとの闇に包まれ端居かな
両岸に樹々迫り来る鮎の川
炎天下草一つなき母の畑
初潮の音なく河口のぼり来る
狗尾草や空地は風の吹きだまり
冬凪や船に遅れし浦の波
島々にかかる大橋星月夜
鷹の空さへぎるもののなき真昼
暮れ方の浜に千鳥の声走る