初富士を讃へ海辺をたもとほる
初鴉天国の師へこゑ伸ばす
惜命の文字やはらかき寒燈下
一行の父の学歴麦を踏む
地球儀の海のみづいろ燕来る
雲をみてゐて春愁を深めけり
夕薄暑深川めしの匂ふ路地
凧合戦雨の重さをはね返す
花あふち音なく降れり写経の日
師の句碑の影をはなれぬ白日傘
蟬しぐれ分つ太宰碑鷗外碑
鳴り竜の声すずやかや小鳥来る
桃咲いて綾子の花とおもひけり
櫓の音の遠ざかるごと秋逝けり
石蕗の黄の淡し波郷忌過ぎてより