大書して躍る馬の字筆始め
御僧の衣ふくらむ涅槃西風
芽柳の煙を纏ふごとたてり
鳥帰る古き手帳を捨てられず
卵塔へ著莪一本を供華として
東山五条大橋街薄暑
夫の忌を修し夜更けて髪洗ふ
山寺や梁より落つる大百足虫
きりぎりす一輌電車来て止まる
猪垣の続く山畑塩の道
石仏の風化著けき露の寺
夕暮れて花野は風の棲家なる
鴉来て手元見てをり大根引く
帰り花日溜りに咲く舟着き場
海鳴りや波止越えて来る冬の波