春の鴨水輪を広ぐ山の湖
青田風吹き上ぐ羽黒大鳥居
蜥蜴這ふ丸太の椅子や南谷
霧に消ゆ金剛杖の鈴の音
猫じやらしの束振りかざし下校の児
蕎麦の花揺れて風生る峡の畑
寺跡の礎石縁どる赤のまま
梅擬茂吉の墓所に彩ひとつ
枯尾花入日となりし日本海
雪底に水流る音権現堂
茶を汲める音の静寂や雪積る
沢沿ひに獣道あり寒晒し
断崖を離れ雪片煌めけり
水温む西湖に想ふ蘇東坡の詩
朧夜や蘇州の宿に胡弓の音