田の神に先づ浄め塩鍬始
寒晴の空いささかもゆるみなし
猛る火を猛る火が追ふ大野焼
恋の猫尾を立てくぐる勅使門
遠足の声登り来る展望台
リラ冷や仔犬傍へに辻楽師
新樹光窓辺に並ぶ試験管
門火焚く母黙々と黙々と
肩で哭く木偶人形や虎が雨
新涼やぴしりと決まる墨の糸
丹念に梳る妻西鶴忌
牧童も追はるる牛も霧に消ゆ
雑兵は二色で足るる菊人形
磴登る色なき風の立石寺
棟梁の短き指図朝焚火