井戸水で顔洗ひをり帰省の子
花屑の美しければ掃かずおく
傍らに手製の椅子や梅真白
紅茶の名マルコポーロや降誕祭
こほろぎの声枕頭に聖書かな
母の忌や都忘れのよく咲いて
冬仕度行李の底に母の文
空豆の薬莢のごと飛び出せり
駅頭に子規の句碑あり燕くる
手櫛もて夫の髪とく今朝の秋
兄の漉きし最後の和紙や障子貼る
秋日和神戸は坂の多き街
修行僧列なしてくる冬木立
婚約の報せ届くや日脚のぶ
磯遊び図鑑にはなき貝拾ふ