堆く肥料積まれし春立つ日
三度目よ春風のこと話すのは
山笑ふ顎の辺りの吾が家かな
草はまだ色をなさぬや流し雛
脱ぎ捨てし靴がいくつも野に遊ぶ
線刻の淡き如来に春惜しむ
築山に鳥影絶えぬ立夏かな
牡丹の開くは朝日昇るごと
畦草の足にまつはる梅雨入りかな
山山の青を尽して稲は穂に
田の神に先づは手を打ち稲を刈る
羽二重のごとき手触り走り蕎麦
近くより遠く瞬く冬灯
アルプスの空に張り付く寒さかな
黒門の甍眩しき初御空