初明り白さ増しゆく火床の幣
農具市駝鳥の卵売られをり
薄氷をつつきて供花を挿しにけり
煤けたるかまどの神の余寒かな
春耕や土の匂ひの広がれり
み仏の箔の名残や春惜しむ
大店の雛に天窓明りかな
春鰯さばく庖丁曇りけり
べつ甲の櫛の欠けあり花の冷
送り火の尽きて闇夜の深まりぬ
新涼や引き戸に残る檜の香
祇王寺の手桶に朝の桔梗かな
冬の月蔵の鍵穴照らしけり
短日の寺を通りていせ辰へ
ほど祭海老の大髭動きをり