初春の座椅子の父のアリアかな
納戸より破れし提灯建国祭
来し方の匂ひかすかに雛の部屋
房総に津軽訛の蜆売
木箱打つ鎚軽やかに花りんご
母の日の母に歌ひし子守唄
白神へ乗継ぐ駅の青葉風
退院の身支度の紅明易し
茶簞笥に毒消売の空袋
灯を入れて睨みいや増す鬼ねぷた
秋立つ日硝子の食器仕舞ひたり
風のまま雨のままなる猫じやらし
微笑の遺影に語る夜長かな
天高し岩木の裾野実のたわわ
嘴に氷柱垂らして北の鳥