風に日の温みありけり蕗の薹
観音の影のふくらむ春日かな
うすら日に影あいまいや戻り寒
仏飯のすぐ硬くなる春寒し
たんぽぽや棚田は曲線ばかりなる
浅春の風吹きたまる虎口かな
淡色の空の濁りや花の冷え
たらたらと水吐く艀霾ぐもり
春疾風鴉の声の途絶えがち
坂一つづつに昔名朧の夜
散るもすぐ群れる魚影暖かし
山笑ふ斜面に関跡貼り付けて
熊出しと貼紙秩父の遍路道
朱印受けあとそそくさと群遍路
雪解雫風化の止まぬ磨崖仏