遠足の子に象の鼻届きさう
霾や耶蘇聖鐘の刀傷
花冷えの人影を踏む祇園かな
山焼の煤を纏ひてほかひびと
味噌蔵の庇かすめて御柱
向日葵や天動説の妻の留守
喉越しも柾目のままに冷素麺
アメ横にプラダと並ぶ干し鰯
石榴の実鈴生りに爆ぜ零れざる
陽炎の中を離陸機着陸機
酒蔵に諸味つぶやく豊の秋
その影を稲架に届かせ飯田線
木枯の角曲がり来る丸ノ内
紅蓮なる大満州の夕枯野
生牡蠣の中なる海を啜りけり