繭玉の部屋開け放つ遠野晴
初漁の父の背に打つ切火かな
緋袴に桜の風の觸れにけり
風呂敷のはらりと解けて桜餅
初蝶の宙の広さに戸惑へり
螢火の一つは草にしづもれり
肺蒼くなるまで緑の風を吸ふ
巣燕に大きな空のありにけり
更衣幾度たたむ母のもの
阿蘇赤牛茅花流しの野に放つ
鮎落ちて大河は黙を貫けり
淡海いま崩れし魞の秋の色
友禅の上を紅葉の流れけり
烈風の空に高鳴る枯柏
寒月や瀬戸の島じま隠れなし