秋めくや磨き上げたる皿小鉢
包丁研ぐ指先の反り野分晴
初秋刀魚塩かりかりと焼き上ぐる
秋ともし旅の土産のますほ貝
あかときの野に抜きん出て吾亦紅
野の花を瓶に投げ入れ月まつる
むくろじに残る夜の雨波郷の忌
父の色母の色ある毛糸玉
ふだん着の綾子のことば去年今年
霊場の昼のかがり火初松籟
待春の水ひびき合ふお鷹道
木戸口を風の出てゆく夕牡丹
空の青抜けて水面へ初つばめ
みづうみの水脈の直線鳥帰る
囀りや風の変へゆく水の色