若葉風女工哀史の峠道
鉋の刃叩きて戻す寒の晴れ
反り釘の先光りゐる実朝忌
軽鳧の子のこぼるるやうに水に入る
浸けられて砥石泡吐く残暑かな
竜田姫馬返しまで降りて来ぬ
しやぼん玉歪み正して離れけり
雨上がる雲のゆるびや合歓の花
金縷梅の開ききつたる縮れやう
山焼きの火の風生みて駆け上がる
羽ばたかぬ天使の翼春愁ひ
磯菜摘み崩れてよりの波早し
白鷺の一歩は水面踏むやうに
交番の地図の手擦れや小鳥来る
括られて子規庵の萩なほ乱る