厨より酢の香立ちたる雪催
聖堂の蒼き屋根より風花す
兄弟で叱られてゐる春の泥
ものの芽に囲まれて娘の新世帯
天近くはじむる田打ち能登の海
川柳の空に巻上ぐ浅みどり
かはほりや空に灯の輪の観覧車
遠泳や行く手の島の浮き沈み
故郷の山振り返る立泳ぎ
朽船の影を濃くせり磯花火
潮騒の他は聞こえず遠花火
夜涼みに山黒々と鎮もれり
湧水に砂子の舞へる秋日差
父逝くや夜つぴて響く雪起し
岩鼻に潮の香満つる冬銀河