すぐ変る潮目やけふの冬日和
奉納の草履小さし白露けふ
霊山の風や名残の山法師
空海の三鈷の松やけふ雨水
音立つる霧や狐の剃刀に
深山には深山の色の岩菲咲く
新盆やいつもの位置に母の椅子
十二月八日いつしか海を見に
陶壁に呉須の濃淡年詰る
初蝶の吹かれてはまた定位置に
風音に父の声きく吾亦紅
明易や普段着の母夢に出て
母の忌の霊供のおさい土筆かな
綾子の句思ひ蚕豆茹でてをり
もてなさる手揉みの新茶母憶ふ