無人駅みどりに塗られ春を待つ
余寒かな鳴り龍鈍き音こぼす
余寒なほ帯をきりりと舞稽古
水温む厨の妻の鼻唄に
撒き餌に手応へのなき梅雨の池
夜をこめて犬の遠吠え山瀬風吹く
敷石の毛虫踏まじとたたら踏む
放屁虫ころり掃き出す躙り口
産土神に誰が吹く笛か月今宵
桐は実に遠野民話の河童の碑
早池峰の風得てたぎる芋煮鍋
月を観る祈りに似たる母の背な
厄日けふ慰問に踊る大黒舞
漁り舟釣瓶落しに紛れけり
闇汁の紐のごときを引き合へり