背を反らす英治の座椅子鳥雲に
木より木へ空より空へ閑古鳥
那須五岳裾を一つに眠りけり
ゆづりあふ子規庵の径こぼれ萩
柳絮とぶ翁に並ぶ路通の碑
灯を消せばともる小さき灯後の月
越ゆるべき丘を真中に十二月
杓ごとに甘茶光を新しく
内の輪を抜けて外の輪盆踊
新藁や育てて兎売りし日も
呼ばれたる子の天を突く捕虫網
一つ葉に一つの支点芋の露
青田波立たせて畦の真直ぐかな
風を読むための流灯一つ押す
流れ出て薄氷に向きなかりけり