柴の戸に待春の鳥いくたびも
安心といふさながらに落椿
鳥引くや入江は常の景ならず
紫は千年のいろ花菖蒲
ゆふぞらのいろづきやすしねぶのはな
ラムネ玉ちりんと鳴つて恐山
東京をびしよ濡れにして桜桃忌
先頭のしんがりとなる稲雀
山晴忌「ぼるが」は夕の火を熾す
秋の声久女の墓のうしろより
頑なにいつもの場所に竜の玉
漉き上げて天地返しに紙を置く
十二月八日の雲が鴉吐く
冬菊の黄を絞りだす力かな
風花はことば一片づつ光り