年新た薪に去年の火うつりゆく
年木樵山気背負ひて戻りけり
鶯餅よく啼きさうな嘴もてり
三月や風音に耳さとくなり
井月のこゑのまぼろし花の昼
いつもより饒舌となり修司の忌
梅雨深し藍のしづもる猪口の底
蛍火を友の魂火と見てかなし
人恋へば郭公午後を鳴きつげり
万緑や底ひより生る水の音
喪ごころに風さだまらぬ白芙蓉
吾亦紅さびしき丈を伸ばしたる
いくたびもふり向いてきく秋のこゑ
凍滝の凍てを重ねしあをさかな
大寒や万物に罅入るごとし