寂しさへこの橋渡れ雪解靄
散る際の放心にあるさくらかな
散るさくら仏は千の手をひらく
たんぽぽの絮の球体こそ平和
油絵の油の匂ふ薄暑かな
植ゑし田をしろがねの風走るなり
灯を消して草田男忌あす原爆忌
雁渡る水の鋭き越の国
鉄塔を離れてよりの盆の月
龍淵に潜む山々膝そろへ
行く手見てふと振り向いて秋の暮
綿虫の雲に上つてしまひけり
落葉踏んで智慧の深まりゆくごとし
鷲啼いて山河応ふるもののなし
初御空欅は網をひろげたり