吊し売る腸詰赤し春の雪
蔦の芽の音符のごとく走り出す
水ぬるみしかはんざきが指ひろげ
天平の屋根をころがり恋雀
囀のひとかたまりに移りけり
そら近き花より錆びて泰山木
青嵐教へ子の今日母となる
飲み干せばラムネの玉の落ちつきぬ
星月夜空までつづくキャベツ畑
鉦叩闇の深さを計りをり
沈黙を吐き出す夜の黒葡萄
お手玉のごとくに窄み芙蓉落つ
この日和いつまで続く浮寝鳥
鴨の陣端よりめくれ飛び立てり
霜柱踏み崩すより光り出す