野の風をこぼれて来り初雀
ものの芽の漲る力日の裏も
春泥を来て懐かしき人の声
五月富士空晴れきつて定かなり
花了る樹にやはらかき息のあり
草笛の草に戻りて流れけり
代搔きの水の伸びゆく光かな
水音を離れてよりの草いきれ
空蟬の葉裏に時の止りけり
虹の脚消えて緩びぬ空の張り
綱引きのみんな転んで天高し
波の間に日の昏れありぬ浮寝鳥
影と来て水面をたたく鬼やんま
冬紅葉渓流渦となるところ
笹鳴や林中に日の深くあり