十村の闇を震はす御神渡
佐保姫の信濃の山に難儀せり
楤の芽の幾度も採られ棒となり
三代が揃ひ斧打つ御柱
山繭の空に光れるうすみどり
手さぐりの城の階段五月闇
板屋根に万緑迫る奈良井宿
暗闇に種火の走る揚花火
樺の皮剝ぎて信濃の盆用意
高原の風を呼び込む蓼の花
緑の葉添へて白桃送りくる
青北風や山河一気に澄み渡る
山畑の日差の薄しむかご摘み
団栗の独楽の斜めに走りけり
蛇口だけ菰から覗く冬構