手短な御慶でありぬ共に生き
家中がのた打ち回る福笑
亀鳴くも鳴かぬも妻とふたりかな
弟が逝つてしまひぬ春立つ日
蛤になれぬ雀の田といふ海
だしぬけに波の綺羅より海女の笛
法名に海の一文字夏来る
点滴に繋がれてゐて夏に入る
リハビリの試歩に寄り添ふ日傘かな
天皇の長靴召さる田植かな
簗守を寝かせぬ雨となりにけり
地下鉄を出で名月の家路かな
着膨れて東京ディズニーランド行
炭足してひととき暗くなりにけり
遠吠えが遠吠えを呼ぶ霜夜かな