草青む日差しあまねき熔岩の島
噴煙を上ぐる島へと土用波
春霞絵巻のごとき瀬戸の景
行く春や江戸町地図のままの浜
船洗ふ若き漁師や風光る
処暑の風浜の小路にいりこの香
海鼠壁残る浜蔵秋夕焼
春炬燵子らに分けゐる旅土産
六月の高原に聞く祝婚歌
考へる人に降りしく蟬しぐれ
サーファーの忍びのごとき身のこなし
三月の声の後押す母の外出
母のまた見納めと言ふ桜かな
卒寿過ぐ母と修す忌麦の秋
薬用酒母の購ふ半夏生