うぶすなの全き日なり薺摘む
酒樽の箍の青さも花の内
その上は木場たる入江風光る
貝母咲く飛地い号といふ阜
花散らしの雨の明るき西行忌
徒渉る瀬々や木橋や風薫る
招福の舞の涼しき足拍子
母の日の母に教はる酢の加減
手ついでにグラスを磨く夏夕べ
武家門に松の影濃き良夜かな
返状をポストに落とす十三夜
母郷いま灯ともし頃や衣被
乾るといふ音をうべなふ枯葉道
髪低く結うて膝繰る冬座敷
可惜夜の昔語りに炭をつぐ