軒灯の淡き祇園や鳥総松
洛北の風まだ固き光悦忌
托鉢の袈裟にひとひら花の塵
川風に裾を乱して知恵詣
鱧を裂く音一瞬に走りけり
地獄図を仄と灯して堂涼し
笙の音や湖面をすべる月見舟
馬の字の天を駆けゆく吉書揚
春荒れや木々を放さぬ風の音
春ショールふはりと淑女めきにけり
たんぽぽの絮アンデスの風に乗り
昇降機一気に昇る星涼し
墓石に旅の一文字鰯雲
陀羅尼助掌より零るる神の留守
枯れきつて洗ひ晒しの芭蕉かな