日輪を燻らせ上がる大どんど
一山となりたる雪の千枚田
煤付きし土器の破片や冬ぬくし
海苔採りの二人を隔つ波の音
捨て田いま山の続きや榛の花
用水の勢ひ豊かに田打ちかな
抱卵の朱鷺身じろがず木の芽風
三日旅戻れば燕来てをりぬ
梅雨の蝶連れて出でゆく盥舟
梵鐘の音吸はれゆく若葉雨
夏の月御所の赤松浮かばせり
蟇鳴いて法話の膝をくづしけり
落日の色もて出づる望の月
無花果の日の温もりを食しけり
廃鉱の岩肌霧の立ち上る