「俳句文法」入門 (2)          
─ 助動詞「り」をクリアしよう!─          大林明彦   

  助動詞「り」は四段活用の動詞とサ変の動詞だけに接続する。それ以外に接続しているのは誤用である。たとえば、〈高幡の塔の裾よりもみづれり〉がそれである。
 もみづは、もみぢ(ず)、もみぢ(て)、もみづ、もみづる(時)、もみづれ(ば)、もみぢよ、と活用(未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形)するダ行の上二段活用(イ段音とウ段音のみに活用)である。従って古典文法では誤用とする。用例がないのだ。ではどうすればよいか。答えは下記の中より選ぶことだ。
高幡の塔の裾よりもみぢたり
高幡の塔の裾よりもみぢけり
高幡の塔の裾よりもみぢぬる
高幡の塔の裾よりもみぢしぬ
 他の方法として〈松あまた聳ゆるほかは紅葉せり  秋桜子〉のように紅葉(もみぢ)すとサ変動詞にして、その未然形に「り」を接続するのである。
高幡の塔の裾よりもみぢせり
 秋桜子は「紅葉せり」を多用している。もみづるがラ行四段の動詞としてあればいいが残念、ありません!。
 「もみぢ」には「紅葉」「黄葉」の漢字を充てる。