前川みどり

西馬音内(にしもない)盆踊り 

稲の花村境護る鹿島様

篝火の一筋町や盆の月

魂迎へ軒に真菰の馬と馬子

撓ふ手の雁を模したる踊かな

踊唄哀しきことを賑やかに

紅絹を継ぐ踊衣裳や西馬音内

黒繻子の襟足匂ふ踊子よ

踊上手は宿の女将や笠の内

亡者踊地を擦る音のいや増せり

篝火の亡者踊の目に宿る

母に就き踊子となる少女かな

だらりの帯くるりと秋の風まとふ

地を蹴つて男踊の影大き

音頭取り更けて艶唄繰り出せり

踊の輪抜けてうつつの真暗がり

身売りてふ飢饉の記憶星月夜

踊浴衣夜ごと濯ぎて藍深む

踊子と音頭ひとつになりて果つ

父祖の地へ土方巽躍り出よ

銀漢の田へ滴りぬ羽後の国