2018年12月(通算473号)
自由時間 (66) 2018年12月号
2018年12月1日 自由時間
ノーベル文学賞スキャンダル ノーベル賞の授賞式が近づいてきた。毎年、アルフレッド・ノーベルの命日、12月10日にスウェーデンの首都ストックホルムのコンサートホール(「平和賞」はノルウェーの首都オスロの市庁舎)で行われる。 ノーベル賞を授与するのはノーベル財団であるが、受賞者の選考については、「物理学賞」「化学賞」「経済学賞」の3つはスウェーデン王立科学アカデミーが、「生理学・医学賞」はカロリンスカ研究所が、「平和賞」はノルウェー・ノーベル委員会が、「文学賞」はスウェーデン・アカデミーがそれぞれ行なっている。 同アカデミーに激震が走ったのは、昨年の11月のことである。
曾良を尋ねて(112) 2018年12月号
2018年12月1日 曾良を尋ねて
3月4日に再び京都をはじめとして近畿への旅に出る。そこで各地で「衆」と言われる集団と会って連絡を取り合っているこれは推測であるが公儀への情報集めであったと思われる。それにしても曾良は京都近畿の神社、寺をくまなく短期間に見て回っている。
枕草子のおもしろさを読む(19)2018年12月号
2018年12月1日 古典に学ぶ
「野分のまたの日こそ」(189段)の「をかし」の世界②このように、庭を眺める二人の女性を点出するが、それもその衣の色の一つ一つ、髪の具合とその姿態の一々を精細に書き留めており、『枕草子』の拡散する視野の生むものは、スケッチ風の世界である。一方『源氏物語』の「野分」の巻は、翌朝になってようやくおさまった野分が、一巻の背景として描かれていて、作者の卓抜な描写力が遺憾なく味わえる。
はいかい漫遊漫歩(100)(101)2018年12月号
2018年12月1日 はいかい漫遊漫歩
戦争が終って何年も経ってのことだが、パリでぼくはあるきっかけから、フジタの信頼を受けるようになった。身近に接してみると、この巨匠はおそろしくお人好しだ。それは信じられないくらいで、蔭で夫人がだんだん人嫌いになるのも分かる。あんなにも利用されたり、傷つけられ、金銭を騙し取られるのを見ていると、ぼくでさえ、いらだつ。 日本国籍を返上、フランス国籍を取ったレオナール・フジタは、「私が日本を捨てたのではない。日本に捨てられたのだ」とよく語っていたという。 〈 私は、世界に日本人として生きたいと願ふ、それはまた、世界人として日本に生きることにもなるだらうと思ふ。〉(藤田嗣治『随筆集、地を泳ぐ』より)