5月とは思えぬ気温30度超えの晴天に恵まれた5月25日、高尾句会は、総勢12名で八王子城跡への吟行に出かけた。
 JR高尾駅からバスで15分程揺られて、八王子城跡バス停に到着した。早速、北条氏康の三男氏照とその家臣らの墓所へ向かった。深沢山の山懐の小さな集落の畑の中に、上杉軍との戦に敗れた家臣、中山勘解由の屋敷跡や、その娘を偲ぶ桜が植えられて、周囲には今年竹があちこちに顔を出していた。森の中の百段ほどの階段を昇り、小さな曲輪の端と思われる所に墓所はある。氏照とその家臣らの墓が寄り添う様にひっそりと鎮まっていた。天正18年6月23日落城の当日、氏照は小田原城に詰めていた。「猪や蝮に注意」の標識が、あちこちに立っている山道を5分ほど歩くと「八王子城跡ガイダンス施設」があり、城跡の概要ビデオ、出土品、北条氏の家系図などを見学し休憩を取った。
 いよいよ八王子城御主殿跡に向け出発。城山川に添って、大手門跡→古道→曳橋→虎口(これらは、平成4年に発掘・発見そして一部を復元)→御主殿跡の礎石群→御主殿の滝を巡った。この滝は豊臣軍の上杉景勝、前田利家、真田昌幸らの兵力による敗戦で女人や子供が自刃し、城山川は三日三晩血の川となったと伝えられている。普段水量は少ないが、先日の大雨でみごとな滝になっていた。

 その後、ガイダンス施設に戻って、句会となり、奈良英子先生のご指導のもと、皆同じ景色を吟行したものの、見方や感じ方は各々異なっていて楽しい句会となった。
 また、吟行中、八王子生まれで今年89歳となる句友の馬場圭治氏(生き字引のように良くご存じ)に鳥や植物、歴史などのこぼれ話を折々にして頂いた。
 「報告 廣仲香代子」

当日句より
青空の深さにひらく朴の花英子
竹皮を脱ぐ武士の屋敷跡まさこ
虎口抜け御主殿跡の風涼し和世
竹皮を脱ぎ青天のゆるぎなし 
城跡の鬼哭啾啾漏るる滝郁朗
あやかしのゐさうな城址木下闇照子
苧麻むきつ昔話も滝の道克子
老鶯の声の頻りや城の跡香代子
すすり泣くかに御主殿の滝の音三智子
兵の墓石寄り添ふ木下闇圭治
石に盛る土竜の塚や青葉闇淳一
落城の黒ずむ礎石風薫る美智子