「俳句文法」入門 (22)
─ 助動詞「り」について─ 其の3 大林明彦
完了存続の助動詞「り」が四段とサ変共に命令形に接続するという説は簡便だが少々無理か。奈良文法としてはいいが、古典文法は平安中期以降を基に創られた平安文法だからである。サ変の命令形には「よ」が付くようになっているのだ。「我をいかにせよとて」と竹取物語にある。ゆえに、サ変は命令形ではなく未然形に付くという説の久保田淳先生の角川の古語辞典を私は支持したい。以上が①②説。③説は従来通り、サ変の未然形、四段活用の已然形に付くというもの。ベネッセの古語辞典が玆(ここ)の所をよく整理している。
紅葉せる麓の水車音軽し 持田良枝
初句はもみぢせるともこうえふせるとも読めるが前者だろう。もみぢは上二段活用もみづの連用形名詞。名詞に「す」が付くと複合動詞のサ変となる。もみぢせ、はその未然形。る、は、りの連体形。完了に訳せば紅葉した、存続に訳せば紅葉している。文法的意味は訳によって決定する。「もみづれり」が昨年迄流行していた。一種の感染症。沢木欣一が作ったと電話もあった。本当にそうか。ならば四段活用のもみづるを造語した事になる。あってほしい言語ですが……。
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