「俳句文法」入門 (26)          
─ 過去の助動詞「き」について─                    大林明彦 

 過去を表す助動詞「き」は一般に連用形に付き「せ・〇・き・し・しか・〇」と活用。連体形「し」が頻用。
凩に錆び鰐口唸り上ぐ小池伴緒
三の酉終へ安堵の静寂かな小池浩江
文化の日補助輪取れ子と父と菰田美佐子
ふるさとの水仙活け仏間かな金嶋智鶴
葱のぬた鉄砲和へとは誰がつけ石鍋みさ代
 過去の回想、過去の直接経験を表し、「…た」と訳す古例が多いが、今は完了(…た。…ていた)や存続(…ている)と訳す例句が多いと思う。完了した事が現に存続しているのだ。更に連体形「し」で終止して詠嘆や余情を表す(…だったことよ。…たことよ。)の例句として石鍋俳句は可いのではないか。
 良師良友良書を持ては金言だが、文法においても然り。受験用の文法書には「き」は過去としか書かれていないものもあるが学者達の研究の進化で文法的意味も拡大深化している。古語辞典は十数冊私は参照する。解なくて鑑賞なし。句会毎に文法の問をする句友がいて頼もしい。嬉しい学友だ。問答で相互に深め合う。
「き」は過去のみに非ず。完了存続詠嘆余情等あり。