「俳句文法」入門 (39)
─── 助動詞「らし」について ─── 大林明彦
推定の助動詞に「らし」「めり」「なり」がある。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 己然形 | 命令形 | 活用の型 |
らし | ○ | ○ | らし | らし(らしき) | らし | ○ | 特殊型 |
①眼前の事実に基づいて推定する。客観的な事実に基づき推定する。推定は推量とほぼ同じだがそれをやや進めた言い方。
②活用語の終止形に接続する。ラ変・ラ変型の活用語には連体形に接続。(あるらし、など)
③「・・・ラシイ。・・・ニチガイナイ。」等に訳す。例としては万葉集・二八の<春過ぎて夏来たるらし白妙の衣乾(ほ)したり天の香具山>がある。白妙の衣の輝きを見て推定しているわけだ。なお「来たる」はラ行四段活用の動詞の終止形である。わが春耕の作者より引用すれば<越えられぬ高さ持つらし春の蝶 安原敬裕>がある。春の蝶の飛ぶさまを見ての推定である。持つはタ行四段活用の終止形。「らし」の連体形「らしき」は奈良時代に用いられた。万葉集・一三に<古(いにしえ)もしかにあれこそうつせみも妻を争ふらしき>とある。過去の推定「けらし」も<夕されば小倉の山に鳴く鹿は今宵は鳴かず寝にけらしも>とある。「けるらし」の略。
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