「俳句文法」入門 (76) 
─── 「係助詞の「は」と「も」について───           大林明彥

   係助詞はかかりじょしと言うが、けいじょしとも言う。種々の語に付き或る意味を添え、文の結びに一定の活用形を要求する。「は」と「も」の結びは終止形。「は」は他と区別して主題を強調する。
北国の庇長し天の川正岡子規
春待つや余生少し手抜きして乾佐知子
伊賀甲賀空不穏な雪催柚口満
午祭帰りゆるり女坂飯田眞理子
若太陽(わ かてぃだ)や金波銀波渚まで澤聖紫
尻もちの記憶今にスケート場飯牟礼恵美子
   とり立てて強意を示す「は」もある。
白藤に白きひかりの夕日射飯田龍太
余生と余白たつぷりごまめ嚙む杉阪大和
読初床の軸なる寿いのちなが小島正
寒風や棕櫚葉先に針を持ち濱中和敏
 「も」は添加や強意を表す。各二句を例示する。
啞蟬鳴きをはりたるさまをせり加藤楸邨
梨棚の跳ねたる枝花盛り松本たかし
若返つたかと思ふ初鏡池内けい吾
買初のはや戸惑ふセルフレジ沖山志朴