春耕俳句会は、有季定型の俳句と和楽の心で自然と人間の中に新しい美を探求します。第五感・第六感を働かせた俳句作りを心がけます。
連載記事 - 月刊俳句雑誌「春耕」掲載

曾良を尋ねて

曾良を尋ねて(131) 2020年7月号

将軍交代による新しい方策が実行されているか否かの今回の巡見使の一行は3月1日に江戸を出立し筑前の国門司に到着したのは4月2日であった。すでに60を越えていた岩波庄左衛門正字にとっては厳しい旅となった。福岡藩での調査は順調に進んだが、対馬藩においては長年常態化していた密貿易に対する詮議役として岩波御用人があたることとなった。

曾良を尋ねて(130) 2020年6月号

曾良がなぜ岩波庄左衛門正字として巡検使となりえたかは六代将軍家宣が出した「大赦令」によって松平忠輝の遺子であるとされる身分が復活され、このような公儀の官職に登用されたと考えられる。「大赦令」以前は本人には何の罪もないが先祖、藩主が罪人の汚名を着せられたなら生涯日陰の身分のままで過ごさねばならなかった。正に曾良や赤穂浪士の遺子たちがそうであったように。

曾良を尋ねて(129) 2020年5月号

六代将軍家宣の時代になり曾良は本名の岩波庄右衛門正字で神職者として各地を回っていた可能性がある。そして地誌に明るく卓越した事務能力をもつ逸材として幕府の巡見使の御用人として九州地方へ赴いていたのである。

曾良を尋ねて(128) 2020年4月号

「生類憐みの令」などの数々の庶民を苦しめた五代将軍綱吉の30年にも及ぶ独裁政治が終わり,綱吉が跡継ぎに反対していた綱豊が六代将軍家宣となった。まず手を付けたのが「生類憐みの令」を廃止し「大赦令」を出し多くの犬の虐待にかかわったとされ牢にいた人々や島流しにあっていた赤穂浪士の遺子を解放した。また新井白石を御用学者、間部詮房を側用人に登用し政治を刷新した。1710年諏訪にいた曾良のもとに便りが届いた。それは幕府の巡見使の随員として任命され九州方面へ出発するというものであった。

曾良を尋ねて(127) 2020年3月号

長島松平家を断絶に至らしめた松平忠充と曾良の接点はもろもろの資料からほとんどなかったと推測される。しかし忠充の弟の良兼は越後の村上藩榊原家に養嗣子として入っていて、芭蕉とともに奥の細道の旅の途次に墓参をしていることから確かな結びつきはあった。長島藩の改易、松平家断絶は曾良にとっては大きな衝撃であり、これ以降二度と長島を訪れることはなっかた。

曾良を尋ねて(126) 2020年2月号

念願の芭蕉の墓参を済ませた曾良は急遽長島へ向かった。長島では藩主松平忠充の乱心により芭蕉や曾良とも親交が深かった家老藤田八郎左衛門と家臣が切腹させられた。この件により松平家は没収となり、藩の記録は四散し松平家の分限帳も残っていないと言う。曾良の無念は計り知れないものだったであろう。

曾良を尋ねて(125) 2020年1月号

元禄15年54歳になった曾良は芭蕉がたどった足跡を偲び、故郷訪問もかねて師芭蕉追善の旅をした。故郷訪に立ち寄った後、念願だった義仲寺に実に芭蕉没後7年目であった。その後粟津、大垣に立ち寄り伊勢の長島へと向かった。

曾良を尋ねて(124) 2019年12月号

人一倍情に厚い曾良が芭蕉の臨終にも立ち会わず葬儀にも参列しなかった理由は、ひとえに吉川神道の教えに従ったのではないかと推測される。

曾良を尋ねて(123) 2019年11月号

曾良が芭蕉の臨終にも、義仲寺の葬儀にもまた江戸での追悼歌仙にも追悼吟は手向けたが出ていない。この件においては謎であるが、一つ考えられるのは、曾良の親代わりで生涯後ろ盾として支えてきた吉川惟足が翌月亡くなっていることが原因ではないかとも思われる。

曾良を尋ねて(122) 2019年10月号

芭蕉の陸奥への旅に200日以上にもわたり寝食を共にした曾良が義仲寺での芭蕉の葬儀、および江戸での追悼歌仙にも参加しなかったのは、曾良の義理堅い性格上考えられないことであった。これはおそらく曾良が自由の利かない幕府の公務についていたと思われる。このことは素堂から曾良への書簡で推測される。

曾良を尋ねて(121) 2019年9月号

野坡本は外見は「細道」と変わがないが中はおびただしいい訂正の張り紙が目に付くという。膨大な貼り紙の下を特殊な方法を使って調べてみると「ほそ道」の最終稿へむけての芭蕉の並々ならぬ苦労と気迫が推し量られる。

曾良を尋ねて(120) 2019年8月号

素龍本の原本のとも言われる野坡本の公刊のきっかけは阪神大震災であった。貴重な文化遺産を守らなければいけないという配慮から、複製-交刊に踏み切ったと言われている。これは当然芭蕉の当時のものではなく後年の改装によるものであるが芭蕉学の発展へとつながるものであることは言わずもがなである。

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