大沢の池に舟浮く春三日月
山裾にねねの霊廟月朧
春の波ささやくごとく寄せにけり
ポンペイの石の轍や炎天下
一湾の人のまばらや夏惜しむ
火祭の松明肩に食ひ込めり
落暉いま雲を吸ひ込む冬の海
丸餅のやうな心で生き抜けり