梔子の錆びゆく夜の雨匂ふ
見なれたる街いきいきと若葉雨
箱庭の椅子に風立つ気配かな
木々渡る風を見てゐる夏座敷
西日中配給物資に並みしこと
居る場所に蟇ゐて和む今朝の庭
設計図あるごと蜘蛛が糸を引く
石の上に夕日まとへる穴惑
零余子引く空の青さをひき寄せて
朝の日に草立ち上がる野分晴
アルプスに明日は早立ち星月夜
今朝秋の風を梢に見てゐたり
長き夜や子を守るごとく母看取る
嫁ぐ子に組重を買ふ年の市
来るはずの人を思へり初時雨