洗米の零れを拾ふ寒さかな
余寒なほ固く閉ぢたる瓶の蓋
芝焼の風に先立ち火の走る
薄紙の縮れ正して雛納
囀りの枝移りしてたかぶれり
吉報はゆつくり来るよ葱の花
翡翠の影置き去りに飛び立てり
縁側に風生まれけりかき氷
向日葵の後ろさみしく揺れゐたる
凌霄花記憶の路地は広かりき
新涼やまだ色もたぬ明の空
秋蝶の影溺れゆく潦
凡々と日の暮れゆくや衣被
間延びせし谺のかへる神無月
初雪をこぼして暮るる竹の空