明日香路のどの道ゆくも春うらら
明日香路は水音の中蕗の薹
陽石の注連縄ゆるむ木の芽風
佐保姫が明日香の男綱ゆらしゆく
道切の女綱にかかる春の雪
昼月の宇陀の丘辺のかぎろへる
花の雨吉野の神の簷を借る
畦を塗る卑弥呼の宮の跡といふ
村人のまもる無住寺花石榴
はからずも秘仏を拝み風薫る
宿坊の一夜にこもる蚊遣の香
金堂の三和土にひそむそぞろ寒
すらり立つ百済観音秋うらら
戒壇を出て秋冷の風の中
月今宵襖ひらかる御影堂