立春の鴉泣くごと笑ふごと
春耕の火を焚きてより始めけり
比良八荒の雨粒粗く打ちはじむ
たんぽぽの中まつすぐに歩み来し
足長蜂地にふれながら流れゆく
砂遊びどの子も好きで夏木立
だぶだぶと水使ひゐる原爆忌
虞美人草日の移ろひを追つてゐる
鎌倉を巡りて浜の月涼し
秋簾かかる忌中の家なりし
松林に潮の香至る迢空忌
香を散らし花屑ちらし葛の風
釣瓶落し野の人影のさらはるる
緩やかにおかめ出てきし江戸神楽
河豚の卵嘗て恐るる秘湯の夜