岩崎邸畳廊下の淑気かな
水かげろふして春障子閉ぢしまま
団子坂登りきつたる雛の家
しだれ桜裏はさみしき姿もつ
薔薇の名に悲劇の王妃咲き満つる
石垣より生れしごと来る黒揚羽
長屋門入ればたちまち藪蚊かな
ポンプ井のたしかなきしみ布袋草
風鈴や間口の狭き絵草子屋
子規は臥し吾は立ちて見る糸瓜かな
子規庵の日差しの縁や鶉籠
ガンジー像の細き足元小鳥来る
湯上りの踵へ軟膏一葉忌
ふくろふの定かならざる首廻す
切り揃ふ松の大束年用意