麦青む遙かに烟る近江富士
湾に沿ひ鎮もる舟屋冬銀河
釜の湯のひねもす滾る寒の寺
芋茎和ひとさじの酢で母の味
薄ら日の空に紛るる花樗
遠泳や父の広き背眩しめり
塩田の砂掃き寄せて秋惜しむ
なまはげの足鳴らすたび藁匂ふ