雛箱を抱へ軋ます蔵梯子
耕しの夕日の端を踏みて果つ
蓬摘み終へて一日のかがみ癖
田上りの脚にからまる花の冷
竹皮を脱ぎ百幹に加はれり
田明かりに蝙蝠放つ大伽藍
青飛驒といふ産土に吾子と立つ
夕涼を残し庭師の帰りけり
藁塚の座りよろしき傾ぎかな
姫君の着替への菊の届けらる
本閉ぢて後の夜長を楽しめり
水鳥の胸で押しゆく夕日かな
大津絵の鬼の迎へる初座敷
ひらがなのやうに風花ただよへり
鴨帰る兆しか昨夜のくぐみ鳴き