勝独楽の大きく揺れて停まりけり
子規逝きし部屋一輪の黄水仙
二月堂おぼろに白き花馬酔木
天平の火の粉を浴ぶる春の闇
浮雲に声を残して落雲雀
千曲川花菜明りに暮れにけり
白壁を塗り鏝走る新樹光
竹の皮脱ぐ音闇を深くせり
梅雨入の夜大きな闇の動きけり
殻脱ぎし蜻蛉のふるへ定まらず
虫送り抱へて浴ぶる大藁火
父の杖立てて盆路ととのへり
かなかなの声止みてより深き闇
冬蝶の木の葉に紛る翅づかひ
蓮折れて池の底まで枯れ尽す