児玉真知子

塔の影崩し水鳥翔ちにけり

初冬や尾長声張る雑木山

狼の護符貼る軒端懸大根

初時雨積み上げ匂ふ松の粗朶

海に出る海女のぬけ径冬椿

夕ぐれの日に色尽す寒牡丹

曼荼羅の厨子をよぎりぬ嫁が君

浅春や影長く曳く寄せ仏

磐座を移る初音や国栖の里

屋根替の立て干す萱の匂ひけり

日の匂ふ秣積み上げ牧開き

木曽馬の塩舐め石や樟落葉

草田男碑なんじやもんじやの花匂ふ

初河鹿山むらさきに暮れにけり

夏めくや鯉の背鰭の水尾長し

白南風や棹ひとつきの舟軋む

秋燕や抽出し多き飴問屋

仁王門出でし師の棺雁渡る

椰子の実の着く島影や雁の棹

不忍池の茎まだ青き破れ蓮