雪国早春賦   上野直江

瞽女越えし峠の高み鳥雲に

飼ひ葉桶ぶつころがせり春一番

風垣を解くや潮の香波の音

底深く抉る音立て雪解川

流木の寄せたる岸辺下萌ゆる

薄氷の裂けてふためく群雀

雪根開き栗鼠逆しまに幹下る

ひだまりの土手にほつこり蕗の薹

鶏放つやつと乾びし春の土

探梅行修験の岩の近くまで

谷風にゆられあふられ飛花落花

蒼天の棚田をちこち花菜の黄

そよ風にかたかごの花リズムとる

楤の芽のきこと音立て摘まれけり

枝移りしつつ囀近づけり

乗つ込みの鮒巻き上ぐる泥しぶき

魚止めの滝壺深し山女群る

甲高に鳴いて雉の遠ざかる

いななきを風が果てまで牧開く

つばくらめ雁木の街に巣を並ぶ

上野直江→その人

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